封蝋



アサヒヤ紙文具店


万年筆のインクの濃度をアップする




マイスターの熟成インク
大井町のフルハルターさんで万年筆を購入した時のことです。
いろいろと試し書きをさせてもらい、私の筆記角度などを診ていただいているうちに、ふと気が付きました。
とても魅力的な色のインクで書いていたことに気が付いたのです。
コクのあるブルーをしていました。
どうしても気になって、できたらこれも購入したい。 自分が文房具屋であることも忘れ、そう思いました。 憶えて帰って仕入れようなんてケチな事は考えず、すぐに手に入れたいと思ったのです。
店主の森山氏は、インクビンを見せてくれましたが、そこには小さな紙ラベルが貼ってあり、オリジナルで何か書いてありました。
そして、それが既製品でないこと、熟成され濃度を高められたインクであることを教えてくれました。
やがて、森山氏の手によって私の角度に調整された待望のペンが仕上がり、毎日愛用するようになるのですが、ペリカンのロイヤルブルーがシャブシャブに薄く感じられます。 あのインクを見たせいです。
そこで、森山氏に教わった通り、自分でもやってみました。
森山氏はロッカーの中にビンの蓋を開けて置いておくと言っていました。
せっかちな私は除湿機の前に、蓋を開けてほこり防止に手拭いの切れ端でカバーをかけたインクビンを並べ、水分が飛ぶのを待ちました。
ところが、これがずいぶん時間がかかるのです。


掟破りの除湿剤
とうとう、じれったくなって、この方法を思い付きました。
タッパウェアもどきの密閉容器の大きなのを用意します。
それと除湿剤。 これだけです。
せっかちな方におすすめ スピード乾燥法
一応、ガーゼで蓋をして、除湿剤と共に容器に入れます。

ドイツの水の抜き取りに成功。
(右下)

やり過ぎるとドロドロになります。(左下)



高濃度インクは紙を選ぶ?
さて、いい気になってお気に入りの濃い色で筆記を楽しんでいたのも束の間、ある事に気が付きました。
滲みが多く、裏抜けもするのです。
普通のインクでもモールスキンに<M>位の太さで書くと、ヒゲというか、朝鮮人参のような細い繊維質の滲みが走ることがありますが、いろいろな紙で この現象が出ます。
私の場合は、ペリカン・パイロットでの体験ですので、全てのインクでとは言い切れません。 しかも、ほとんどのペンが<M>以上で、インクフローの良いものが好きだからかも知れません。 また、濃度にもよるでしょう。
とにかく、私の場合はクレインの100%コットンペーパーに書いて、やっと本領発揮というくらい、紙を選びました。 しかし、まさかこの紙をファクス送信票にできるほどリッチではありませんので、日々の仕事の中からは、このインクの活躍の場は段々と消えて行きました。


50年前のインク
私は、限定品の万年筆は、ハマると恐ろしいことになりそうなので、ずっと我慢してきたのですが、うっかりどうしても欲しいペンができてしまい、ユーロボックスさんにお世話になったことがあります。
そのお店は、30年位前の、ビニール袋未開封の万年筆などが普通に棚に並べられており、客層の良さを物語っています。
探してもらった万年筆にインクを詰めてもらいます。
嬉しくて、試筆紙にたくさん字を書きながら、思わず聞いてしまいました。
このインクも欲しいのですが。
ところが、このインクも売り物ではありませんでした。 店主の藤井氏がドイツで見つけた50年前のインクで、500cc位ありそうな大ビンです。
他の色は傷んでいて駄目だったそうですが、このロイヤルブルーだけは大丈夫だったそうです。 色は、私の印象ではエプソンのインクジェットカートリッジのパッケージのブルーのような鮮やかさと、紙面に移った後のマットな落ち着きのようなものを感じました。 


ディープなインクの世界
インクの熟成というくらいですから、乾燥して濃度が詰まって良い色になるというだけではなく、経年変化などの他の要因もあるのでしょう。
奥の深い世界のようです。
ここにご紹介した乾燥法は、実験的に試すには結果が早く出て良いかも知れません。 いろいろなインクでチャレンジするうちに、良い出会いがあるといいと思います。




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