アサヒヤ紙文具店 店長日記

~ 文房具屋の異常な愛情 ~
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インクブロッターに、ひと工夫

  • 2010年 7月 25日 日曜日 12:35 am
コレクト製 インクブロッター P-205

コレクト製 インクブロッター P-205

タイトル写真のインクブロッターは、コレクト社製のものです。 昔から変わらない、味わいのある製品です。
インクブロッターは、世間ではかなりレトロな文房具という印象を持たれているようです。 
また、店頭で使用していると、初めて見るというお客様も少なくありません。      

万年筆を使う人にとって、インクブロッターはとても便利な脇役で、あるととても便利なものです。
書いてすぐに書類をファクスしたり手渡す時や、ノートや手帳に書いてページを閉じる際にインクで他のページを汚さないように、濡れた筆跡の上にあてるだけで、あっと言う間にインクを吸い取ってくれます。
また、捺印したあとの余分な朱肉を吸い取ると、他のものを汚さず便利です。      

そんなインクブロッターですが、このコレクトさんのものは、ゴムの木や一部に桜の木が使用された素朴なつくりで、私は大好きな製品なのですが、一点だけ要望がありました。
それは、取っ手の材質でした。
取っ手は茶色のプラスチックでできており、これが、申し上げにくいのですがちょっとチープな感じがするのです。
ここが木製であったり、他の素材であればもっと高級感が出て、使うのも更に楽しくなるだろうと思っていました。      

このインクブロッターの構造は、他の一般的な製品と同様のもので、取っ手と本体はネジで接合されています。
一番下の弓なりになった底を持つ土台の部品から、上に向かってボルトが出ています。
ボルトは、その上の四角い板状の部品を貫通したあと、取っ手に仕込まれたナットで締め込めるようになっています。
この二つの木の部品の間に吸い取り紙の両方の端を挟んでおけるようになっていて、ネジをゆるめて紙の交換ができる構造になっています。      

このような構造ですので、取っ手を好きなものに取り替える場合、そのネジ穴が、本体から出ているボルトに適合していればOKということになります。
既製のつまみ状のものがそのまま使えるなんて、そんな旨い話は無いだろうと思っていましたが、うってつけなものを見つけました。      

ブロッターの構造と、交換つまみ

ブロッターの構造と、つまみ

2年半ほど前に店舗の改装をした際に、色々なものが要りようで、金物屋さんや東急ハンズなどにちょくちょく足を運んでいたところ、引き出しなどに使う取っ手がたくさん売られているのを見かけました。
よく見ると、ちょうどインクブロッターの取っ手と同じで、ネジ穴があいています。
ネジの太さが合うかどうか不安もありましたが、試しに購入して帰り、あわせてみるとバッチリ適合しました。
それで調子に乗り、ホームセンターにまで捜索範囲を拡げ、いくつか集めました。
つまみのネジ穴は、「M4」という規格のものが適合しました。 これは、メートル規格の直径4mmのボルトに適合するサイズです。
写真には、つまみの入っていたパッケージも一緒に写っていますが、何かのご参考になればと思います。 

陶器製のハンドル

陶器製のハンドル

クリスタル風

クリスタル風

木製

木製

ふくろう

ふくろう

色々なつまみを、インクブロッターにセットしてみました。なんとなく、「ハンドル」という感じになってきました。つまみ内部のネジ穴の深さが浅いと、いっぱいまでネジ込んでもスキ間があいてしまうといったトラブルが懸念されましたが、購入したものは全て大丈夫でした。 しっかりと締め込むことができました。


取っ手が変わるだけで、こんなにも雰囲気が変わり、すっかりグレードアップしたように感じました。これにすっかり気を良くして、今度はエルバンのインクブロッターでもやってみようと試みました。ところが、エルバンのものはネジの構造がコレクト製とは逆の仕組みになっていました。

構造の違い

構造の違い

コレクト製はインクブロッター本体からボルトが出ているのに対して、エルバン製(写真の右)ではハンドルの方にボルトが付いており、本体側が受け(ナット側)になっています。
この構造では、先ほどの作戦が使えず、つまみ側にボルトが出ているタイプでないとセットできません。 また、エルバンのボルトはコレクト製より太いM5のタイプです。
しかし、エルバンのインクブロッターは、標準でハンドルが木製になっており、色の感じも本体と一体感があり、これはこれで気に入っています。
ただ、ハンドルの背丈が高いので、もう少し低めのクリスタル風や陶器製くらいの丈であれば、机の引き出しに入れる時に便利かな、と思っていました。
これを実現するには、片側がM5でもう一端がM4になったボルトを作るしかないようです。

こうして分解などをしていて気が付いたことがありました。
それは、エルバン製のインクブロッターには、木と吸い取り紙との間に何も無く、木に直接吸い取り紙が巻いてあるということです。
コレクト製には、両者の間にフェルトが挟まれています。
そういえば、使用時の感触が、コレクト製のものはふっかりとした感じがします。 エルバンの方は、相手の紙がいくらか積み重なっていると違和感はありませんが、カウンターの上に紙一枚といった環境では少しゴロゴロした硬い感じがあります。 ちょっと滑りそうな感触です。
あの感触の違いを生んでいるのは、このフェルトの有無なのかと気が付きました。

フェルトの効果

フェルトの効果

ちょうど、手元にフェルトの切れ端があったので、エルバンの実物に合わせてカットしてみました。
また、革の切れ端もあったので、どんな感じになるか楽しみで、こちらも同じように用意しました。
実際に挟んで使用してみた感触では、革の方は積み重なった紙の上ではあまり効果をハッキリとは実感できない程度のものでした。
一方、フェルトの方は良い感触です。 滑りそうな不安感も無く、ふっかりと安定した感じで、お薦めです。

些細な事ですが、フェルト一枚でこのような使用感の違いがあり、面白いと思いました。
フェルトを標準で採用していて、面積も充分なものがあって使いやすく、業務用で活躍し続けて来た実績のあるコレクト製のインクブロッターには、風格を感じさせる魅力があります。
一方のエルバン製は、小型で取り回しやすく、いつもそこら辺に出しっ放しにしていてもかえって絵になる、独特の可愛らしさを持った存在感があります。
互いの良い所を観察して、自分なりのカスタマイズを施し、より愛着の湧く逸品に育てるのも楽しいかと思います。

実は以前に、コレクトさんの企画部のかたと一緒にお酒を飲んでいた時に、インクブロッターの話になり、ついこの取っ手の件について正直な感想を話してしまったことがありました。
メーカーさんにとっては、製造コストや耐久性の問題もあるのでしょうが、とても真摯に私の提案にも耳を傾けて頂きました。
事務用品としての顔だけでなく、万年筆を愛用される方々が思わず自分の机に置いておきたくなるような製品が生まれてくることも期待しているところです。

コレクトさんの製品には、これ以外にも、本当に味のある興味深い製品がたくさんあります。
見たことはあるものの、まさかコレクトさんが作っていたとは、と思うようなものもあって楽しい世界です。
今後、またご紹介できればと思っております。

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