アサヒヤ紙文具店 店長日記

~ 文房具屋の異常な愛情 ~
You are currently browsing the 文房具 category

万年筆そうじに役立つ耳そうじ

  • 2012年 10月 2日 火曜日 08:56
首軸が倒れにくく便利です

首軸が倒れにくくて便利な洗浄カップ

カートリッジ式やコンバーター式の万年筆は、首軸ごと水に沈めて洗浄できる点がとても便利だと思います。
すっかりインクが乾いてしまったような頑固な汚れでも、カップの水に一晩ほど浸けておけば、すっきりきれいになります。
でもそんな時、簡単そうで意外と困るのが、首軸を洗浄に効果的な姿勢に保っておくことではないでしょうか。

このような「浸け置き」での洗浄を行ったことのある方ならご経験があるかと思いますが、浸けて置いた翌日には下の方に思いのほかたくさんのインクが出て来て沈んでいます。 浸ける前にあれだけ念入りに洗ったはずなのに、こんなにも残っていたか、と思うほどです。
これを見ますと、ペン先やペン芯まわりに付着していたインクがすっかりきれいな水に入れ替わり、インクは重力で下に降りている様子が実感できます。
そのため、できれば首軸は横にせず上向きに立てて浸けておいたほうが中にインクが残らず、せっかくのお掃除を効果的に行うことが出来そうだということになります。

容器には、今までは使い終わったペットボトルを半分にカットしたものを使っていました。 あまり口径が広いと、首軸が横倒しになってしまうからです。
しかし、口径が狭いということは、水の量もあまり多くは入らないということになります。

そんな折、ホテル勤務のお客様から、洗浄カップには綿棒の空き容器が便利であるということを教えて頂きました。 その方はお仕事柄、廃品の有効活用ということで昔からご愛用とのことでした。
私も真似をさせて頂いて、綿棒の銘柄は洗浄カップに適した容器に入った製品に切り替え、それを一生懸命消費し、用意しました。 なるほど、水もたっぷり入りますし、首軸が倒れて壁面に当たっても軟らかい樹脂なので安心です。 また、形状もシンプルなので洗いやすく便利です。
これに、首軸を倒さずに立てておける工夫をすれば完璧と思い、前から気になっていた対策を本気で考えることにしました。

猫よけのトゲトゲ

猫よけのトゲトゲ

家族も納得の、別の本来の用事のために訪れたホームセンターでの買い物の折に、心にこういった漠然とした宿題を密かにいくつも抱えながら店内をさまようのは、私の楽しみのひとつで、いつもこれのせいで長居してしまいます。
しかし、今回の件ではあっけなくすぐに良い製品に出会ってしまいました。 猫よけのトゲトゲでした。

このトゲトゲのベースになっている部分は、細いランナー状になっているので、都合の良いサイズにカットするのも簡単です。
カップとして使う容器の形状に合わせてカットし、底に沈めて使用すれば、首軸の安定に役立ちそうです。

カップの底に合わせてカット

カップの形状にカット

このようにカットしてカップの底に沈めて使うと、複数の万年筆の首軸を一度に洗浄する場合にも便利です。 お互いが干渉して倒れたりするのを気にせず、入るだけセットして洗浄できます。
このトゲトゲは軽いプラスチック製ですので、水に浮きやすい性質がありました。
洗浄したい首軸の本数が少ない場合は、浮力に負けそうな場合もあります。
その場合は、重りがあると良いかと思いますが、釣り用の重りなど金属のものは錆びや化学反応が心配ですので、陶器製の箸置きなどが良いと思います。

このような首軸丸ごとの浸け置きでの洗浄方法は、カートリッジ・コンバーター式の万年筆にのみ有効な方法ではありますが、とてもお薦めの洗浄方法であると思います。
洗浄には一晩、あるいは汚れの程度によっては二晩というふうに時間がかかる方法ですが、それなりにとてもきれいになります。
効果的に行うポイントは、漬ける前の予洗いをなるべく良く行っておくことと、浸け置きの際の水をペン先よりも上になるようにたっぷりと入れておくことです。
このような、確実な洗浄といった簡単で基本的な部分を確実に行っておきますと、万が一の不調の際の原因究明や、万年筆とインクの相性の判断も的確に行うことが出来ますので、とてもお薦めです。

 

インクブロッターに、ひと工夫

  • 2010年 7月 25日 日曜日 00:35
コレクト製 インクブロッター P-205

コレクト製 インクブロッター P-205

タイトル写真のインクブロッターは、コレクト社製のものです。 昔から変わらない、味わいのある製品です。
インクブロッターは、世間ではかなりレトロな文房具という印象を持たれているようです。 
また、店頭で使用していると、初めて見るというお客様も少なくありません。      

万年筆を使う人にとって、インクブロッターはとても便利な脇役で、あるととても便利なものです。
書いてすぐに書類をファクスしたり手渡す時や、ノートや手帳に書いてページを閉じる際にインクで他のページを汚さないように、濡れた筆跡の上にあてるだけで、あっと言う間にインクを吸い取ってくれます。
また、捺印したあとの余分な朱肉を吸い取ると、他のものを汚さず便利です。      

そんなインクブロッターですが、このコレクトさんのものは、ゴムの木や一部に桜の木が使用された素朴なつくりで、私は大好きな製品なのですが、一点だけ要望がありました。
それは、取っ手の材質でした。
取っ手は茶色のプラスチックでできており、これが、申し上げにくいのですがちょっとチープな感じがするのです。
ここが木製であったり、他の素材であればもっと高級感が出て、使うのも更に楽しくなるだろうと思っていました。      

このインクブロッターの構造は、他の一般的な製品と同様のもので、取っ手と本体はネジで接合されています。
一番下の弓なりになった底を持つ土台の部品から、上に向かってボルトが出ています。
ボルトは、その上の四角い板状の部品を貫通したあと、取っ手に仕込まれたナットで締め込めるようになっています。
この二つの木の部品の間に吸い取り紙の両方の端を挟んでおけるようになっていて、ネジをゆるめて紙の交換ができる構造になっています。      

このような構造ですので、取っ手を好きなものに取り替える場合、そのネジ穴が、本体から出ているボルトに適合していればOKということになります。
既製のつまみ状のものがそのまま使えるなんて、そんな旨い話は無いだろうと思っていましたが、うってつけなものを見つけました。      

ブロッターの構造と、交換つまみ

ブロッターの構造と、つまみ

2年半ほど前に店舗の改装をした際に、色々なものが要りようで、金物屋さんや東急ハンズなどにちょくちょく足を運んでいたところ、引き出しなどに使う取っ手がたくさん売られているのを見かけました。
よく見ると、ちょうどインクブロッターの取っ手と同じで、ネジ穴があいています。
ネジの太さが合うかどうか不安もありましたが、試しに購入して帰り、あわせてみるとバッチリ適合しました。
それで調子に乗り、ホームセンターにまで捜索範囲を拡げ、いくつか集めました。
つまみのネジ穴は、「M4」という規格のものが適合しました。 これは、メートル規格の直径4mmのボルトに適合するサイズです。
写真には、つまみの入っていたパッケージも一緒に写っていますが、何かのご参考になればと思います。 

陶器製のハンドル

陶器製のハンドル

クリスタル風

クリスタル風

木製

木製

ふくろう

ふくろう

色々なつまみを、インクブロッターにセットしてみました。なんとなく、「ハンドル」という感じになってきました。つまみ内部のネジ穴の深さが浅いと、いっぱいまでネジ込んでもスキ間があいてしまうといったトラブルが懸念されましたが、購入したものは全て大丈夫でした。 しっかりと締め込むことができました。


取っ手が変わるだけで、こんなにも雰囲気が変わり、すっかりグレードアップしたように感じました。これにすっかり気を良くして、今度はエルバンのインクブロッターでもやってみようと試みました。ところが、エルバンのものはネジの構造がコレクト製とは逆の仕組みになっていました。

構造の違い

構造の違い

コレクト製はインクブロッター本体からボルトが出ているのに対して、エルバン製(写真の右)ではハンドルの方にボルトが付いており、本体側が受け(ナット側)になっています。
この構造では、先ほどの作戦が使えず、つまみ側にボルトが出ているタイプでないとセットできません。 また、エルバンのボルトはコレクト製より太いM5のタイプです。
しかし、エルバンのインクブロッターは、標準でハンドルが木製になっており、色の感じも本体と一体感があり、これはこれで気に入っています。
ただ、ハンドルの背丈が高いので、もう少し低めのクリスタル風や陶器製くらいの丈であれば、机の引き出しに入れる時に便利かな、と思っていました。
これを実現するには、片側がM5でもう一端がM4になったボルトを作るしかないようです。

こうして分解などをしていて気が付いたことがありました。
それは、エルバン製のインクブロッターには、木と吸い取り紙との間に何も無く、木に直接吸い取り紙が巻いてあるということです。
コレクト製には、両者の間にフェルトが挟まれています。
そういえば、使用時の感触が、コレクト製のものはふっかりとした感じがします。 エルバンの方は、相手の紙がいくらか積み重なっていると違和感はありませんが、カウンターの上に紙一枚といった環境では少しゴロゴロした硬い感じがあります。 ちょっと滑りそうな感触です。
あの感触の違いを生んでいるのは、このフェルトの有無なのかと気が付きました。

フェルトの効果

フェルトの効果

ちょうど、手元にフェルトの切れ端があったので、エルバンの実物に合わせてカットしてみました。
また、革の切れ端もあったので、どんな感じになるか楽しみで、こちらも同じように用意しました。
実際に挟んで使用してみた感触では、革の方は積み重なった紙の上ではあまり効果をハッキリとは実感できない程度のものでした。
一方、フェルトの方は良い感触です。 滑りそうな不安感も無く、ふっかりと安定した感じで、お薦めです。

些細な事ですが、フェルト一枚でこのような使用感の違いがあり、面白いと思いました。
フェルトを標準で採用していて、面積も充分なものがあって使いやすく、業務用で活躍し続けて来た実績のあるコレクト製のインクブロッターには、風格を感じさせる魅力があります。
一方のエルバン製は、小型で取り回しやすく、いつもそこら辺に出しっ放しにしていてもかえって絵になる、独特の可愛らしさを持った存在感があります。
互いの良い所を観察して、自分なりのカスタマイズを施し、より愛着の湧く逸品に育てるのも楽しいかと思います。

実は以前に、コレクトさんの企画部のかたと一緒にお酒を飲んでいた時に、インクブロッターの話になり、ついこの取っ手の件について正直な感想を話してしまったことがありました。
メーカーさんにとっては、製造コストや耐久性の問題もあるのでしょうが、とても真摯に私の提案にも耳を傾けて頂きました。
事務用品としての顔だけでなく、万年筆を愛用される方々が思わず自分の机に置いておきたくなるような製品が生まれてくることも期待しているところです。

コレクトさんの製品には、これ以外にも、本当に味のある興味深い製品がたくさんあります。
見たことはあるものの、まさかコレクトさんが作っていたとは、と思うようなものもあって楽しい世界です。
今後、またご紹介できればと思っております。

—————

おぎのみちこさん

  • 2009年 7月 27日 月曜日 21:49
扉そっくりのシルエット

扉そっくりのシルエット

世界にたった一枚だけの、オリジナル グリーティングカードのブランド 「◇ 紙の宝石 ◇」 を運営している、グリーティングカード作家の「おぎのみちこ」さんから、素敵なカードを頂きました。

カードを開いた瞬間、「あれ? どこかでとってもよく見たようなシルエット・・・」と思ったのですが、それはなんと私の店の入り口のドアでした。
ドアの取っ手は、思い入れがあって、鉄板を羽ペンの形に加工してもらって取り付けたものなのですが、これもちゃんと再現してくれていました。 枠の形状も本物そっくりです。

カードを頂いて、本当に心から感動・感激しました。
私が大切にして愛しているものをモチーフにして作ってくれた、すべて手作りで世界にたった一枚しか存在しないカードです。
グリーティングカードの本来の姿・真髄を見せられたようで、まさに「おもてなしの心」を感じました。

おぎのみちこさんは、とても手先が器用で繊細なお仕事をされるかたですが、それにも増してこのような「おもてなし」のセンスやアイディア、物事の観察力に特に優れた人だと思います。
初めてお会いしたのは、革小物司のTAKUYAさんからのご紹介で一緒にご来店された時なのですが、その時の印象をすぐに形にして、後日このカードをご持参くださりました。
制作にあたっては、おぎのさんのブログでのハンドル名である「キッタハッタ」の表わすとおり、ハサミとナイフと糊が全てだそうです。

 この作品のタイトルは、「アサヒヤ紙文具店の扉」。
「萩原さんだからこそ、使える。 そこがまた面白いでしょ?」と、おぎのさん。
自分用のを作ってもらいたくなるショップオーナーさんも多いだろうな、と思いました。

扉の向こうにメッセージを

扉の向こうにメッセージを

裏にはサインが

裏にはサインが

 

 

 
 

 

書きやすいサイズ

書きやすいサイズ

このカードの場合は、糊は使われておらず、ハメ込みで作られています。
計算された切込みにより、表紙にアクセントとなるパターンができています。
使うのがもったいない位ですが、カードはやっぱり使ってこそのもの。 大切な時に心を込めて使わせて頂きたく思います。

 

 ▼ おぎのみちこさんの作品や世界をぜひのぞいてみてください。

おぎのみちこさんのブログ
◇ 紙の宝石 ◇ Jewel of paper
~キッタハッタ が作る、世界に一枚だけのグリーティングカード~
http://blogs.yahoo.co.jp/kitta88hatta

 

———————————————————————–

カリグラフィーを習い始めました

  • 2009年 6月 5日 金曜日 17:53
閉店後に時々練習しています
閉店後に時々練習しています

4月から、カリグラフィーの教室に通っています。
初めて使うことになった傾斜台は、使ってみるととても便利で、書いている文字とペン先がよく見えますので、良い姿勢を保つ事ができます。
また、紙とペンの角度を適切に保ったままで、ペンが水平に近くなるので、インクの流量が安定して書き良くなります。

店には、お試し書き用の様々な色のインクがあるのですが、先生が添削をしやすいように、今はまだ黒一色の世界です。
早く、色々なインクで上手に書けるようになりたいと頑張っています。

 
便利なくぼみ
便利なくぼみ
あて紙を使います
あて紙を使います

エルバンのインクビンには、ペンを置いておける窪みがあります。これはとても便利で、こういう時は本当に助かります。

 

傾斜台に置いてある二つに折った紙は、書く時に手を乗せるために使うものです。
筆記する方の紙に、直接手を置いて書いていると、手の水分や皮脂が紙に移ってしまい、その部分の上に筆記した時に滲んだりする原因になります。

これは手紙を書く時などに経験していましたので、個人的には普段からよく紙を使う事はありました。
自分が汗っかきのせいだろうと思い、ちょっと恥ずかしい気持ちでおりましたが、カリグラフィーの世界では当たり前の事のようで、初日の授業で教わりました。 ちょっとほっとした気持ちになりました。
 
そういえば、以前にあるメーカーさんから、これに関係する相談を受けたことがありました。
ユーザー様から、紙が部分的に滲むというクレームを頂いたが、原因が分からない、インクとの相性のせいだろうか、というものでした。 
 
問題の紙は、私もたいへん信頼している紙でしたので、おかしいと思い、上記の現象の可能性を申し上げました。
ところが、私も一緒になって悩んでしまったのは、それをどうお客様に申し上げるかでした。
お客様の汗や皮脂のことを可能性として申し上げるのは、決めつけた訳でなくとも気が引けてしまいます。
結果的には、丁重にご説明をしたところ、「あれ? 本当だ」 という事になり、円満解決できたそうです。

これからの暑い季節、せっかく途中まで書いたお手紙が書き直しにならないよう、お試しになってはいかがでしょうか。